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2023/9/25 2:00 日本経済新聞 電子版

三菱商事ファッションが開発した「レインポンチョ」を通じて認知度向上をめざす

三菱商事子会社の三菱商事ファッション（東京・港）は、自社開発の高機能素材を使ったレ
インポンチョを商品化した。これまではアパレル企業への生地供給が中心だったが、自社製
品の販売に乗り出すことで、消費者の最終製品のニーズを把握。ブランド力の向上にもつな
げる。

高機能素材の名称は「ディアプレックス」。1998年に三菱商事ファッションが素材を開発し
た。ウレタン系の形状記憶ポリマー技術を使い、あらかじめ設計された温度よりも高くなる
と湿気を外部に放出し、温度が低い場合は保温する。防水性、透湿性に優れている。気温に
応じて素材自体の性質が変化するのが特徴だ。

生地に物理的な穴が開いていない無孔質膜のため、新型コロナウイルスなどを含む小さなウ
イルスの透過も防ぐという。素材を使ってアパレル企業がレインウエアや医療現場向けなど
の製品として販売している。

三菱商事ファッションが開発した高機能素材の「ディアプレックス」

レインポンチョはリュックやコートの上から着用できるゆったりした設計。裾が長く、座っ
た状態でもしっかりカバーする。コンパクトで持ち運びが便利なポケットに入る大きさにつ
くられている。販売価格は1万円。

高価格帯ではあるが「製品の良さを消費者から受け入れられるかどうかマーケティングの意
味合いもある」（栗原司商品開発チームリーダー）。製品は日本国内の協力工場で生産す
る。

三菱商事ファッションは製品の開発工程でCG（コンピューターグラフィックス）を使った
3Dシミュレーション技術を内製化している。レインポンチョの開発でも採用しておりサンプ
ル品を2着に抑えることで、必要最小限のコストで製品化にこぎつけた。

ディアプレックスを採用した医療や救急向けの製品

ディアプレックスの売上高は現在年3億円程度だが、自社製品の販売などで知名度を引き上げ
近い将来年5億円の売上高をめざす。ほぼ同じ機能を持つ高機能素材の「ゴアテックス」は、
参入時期や素材へのブランディングで先行しており、巻き返しを図る。

販売を巡っては、不特定多数から資金を集めるクラウドファンディング（CF）を採用した。
CFを通じて消費者に直接販売し、購入者の生の声を販売戦略に生かす。同社は10年以上前か
らディアプレックスを使った自社製品を販売していたが、近年は生地供給が中心になってい
る。ただ、製品の優位性を把握しブランドを引き上げるためには「定期的に自社で開発した
製品を発売していくことが大事になっている」（白石顕子執行役員）という。

同社はアパレル企業からの中国や東南アジアなどでの受託生産が主力事業。ただ、アパレル
企業自身が製品の調達や物流を担うケースが増えており、新たな収益源の確保が課題になっ
ている。自社が持つ高機能素材を積極的にアピールし、収益源の多様化をめざす。

（大西智也）

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