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2021.09.16

MEDIA

《連載 商社DXの現在地 深化するデジタル実装 ㊥》三菱商事ファッション  “共創”のフェーズへ

繊研新聞 2021 年 9 月 16 日付

デジタルならではの表現を生かしたアバターもある

 三菱商事ファッション(MCF)はアパレルやシューズなどの製販全体の変革を促す3D・CGデジタルスキームを打ち出し、順調に市場を広げている。同社は業界内の〝共創〟による企画支援型プラットフォームの構築でDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する。

ロックダウンも影響

 MCFは、複数のスポーツ系グローバルブランドとの取り組みが「それぞれ2、3シーズン目に入り、継続的に進展している」(谷本広幸デジタル事業推進本部デジタル事業開発部長)状況だ。最近では、ASEAN(東南アジア諸国連合)でのコロナ禍におけるロックダウン(都市封鎖)の影響で、大手スポーツブランドにおけるサンプル生産が間に合わない状況を受けて、MCFに対してユーザーから、展示会用の3D・CGと併せて、営業部員が使用するセールス用途の3D・CGへの要望が高まっている。

 一方、経費削減を図る目的で3D・CG導入を行うスポーツメーカーもある。展示会に向けたリアルサンプル作製はほぼ1回だけ。そのサンプルも1色で、多様なカラーは全てCGで提案する手法だ。同スポーツメーカーとの連携は、22年秋冬向けで3シーズン目に入り、着実なコスト削減を実現している。

 ユニフォーム分野での取り組みも活発化している。大手ユニフォームメーカーとの取り組みでは「安定的に継続しており、デジタルカタログ作製などの領域が広がった」。また、年商20~50億円規模の中小ユニフォームメーカーに対しては、企画支援ツールを提供しながら、取引先が持つパターンや生地などの情報を一覧できるシステムを提案するなどして、相手先の業務改善を促している。

靴型起点で差別化

 シューズ分野ではMCFが得意とするデジタル技術と、靴作りの匠の技を融合して構築した〝ラスト(靴型)起点〟の3D・CGスキームを活用する。ラストデータの管理を国内で一括管理することで、企画・生産のリードタイムを大幅に短縮できる。更には、ラスト起点のシステムによって、シューズの履き心地に影響する着圧感を可視化することが可能になり、消費者に対する的確なレコメンドサービスを提供できる。MCFは同スキームの活用により「靴のDXプロセスをプランニングして、大手シューズメーカーとの取り組みを本格化する」方針だ。

企画支援PF構築へ

 MCFの谷本部長は「業界の2分化はますます進むことになる」とみている。大量生産を行うグローバルアパレル企業と、百~数百枚程度のロットをカスタマイズして生産するマスカスタマイゼーションの企業に2分化するのだ。「そのなかでMCFは双方を対象にしながら、マスカスタマイズを求める企業に向けて企画支援型プラットフォームを構築する」構えだ。3Dモデリングやインターフェイスなどを生かしたサンプル作製、パターン手配、生地供給などのサービスを提供することで、業界の活性化を図る。

 業界のDXは今後いかにして進展するのか。「競争相手が共創相手になることは間違いない。つまり、相互のインターフェイスによって、各社のプラットフォームとの連携が進んでいく」(谷本部長)と言い切る。3D情報などのデジタル技術で互いの企業の得意分野を組み合わせたプラットフォームの形成が業界発展に欠かせない。その上で「アパレル産業のルールが統一化、標準化されてくるだろう。そのなかで一気に業界のDXが進展する」とみている。

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