MITSUBISHI CORPORATION FASHION
2020.10.15
MEDIA
《連載 デジタル化が加速する商社OEM・ODM②》三菱商事ファッション㊦ デジタルを“文化”として発信
繊研新聞 2020年10月15日付
三菱商事ファッションは製品OEM・ODM(相手先ブランドによる設計・生産)における試作反やサンプル縫製を不要とする「3D・CGデジタルスキーム」の提案を本格化している。サンプル作成プロセスの削減で大幅なコストダウンや、生産リードタイムを短縮できるものだ。しかし、同社は「この仕組み自体を〝システム〟とは考えていない。3D・CGデジタルスキームは今後、多様な開発提案を行いながら変化・発展していくことが前提になっている」(谷本広幸デジタル事業開発部長)と強調する。その上で同社は「業界に対してデジタルを〝文化〟として発信する」構えだ。
システムかカルチャーか
3D・CGデジタルスキームは7月のスタート直後から市場からの引き合いが強い。「コロナ禍で、サンプル作りが難しくなっているので3Dモデリングを活用したい」「リアル展示会が開催できない中で、CGによるデジタルカタログ、デジタルプロモーションに使いたい」。ECやDtoC(メーカー直販)の広がりから「EC専用ブランドの立ち上げに際して、このスキームを使いたい」などの依頼が増えている。
これらの取引先は二つのタイプに分かれる。「デジタルをシステムとみるのか、カルチャーと捉えるかで、取り組み姿勢に大きな違いがある」(谷本部長)とみている。
システムと捉える取引先は、「既存のリアルなサンプル作成や商品提案と比べて、コスト面でメリットがあれば採用しよう」と慎重に考える。
一方で、デジタルをカルチャーと捉える取引先は「取り組むことに意味がある。デジタルファーストで様々なトライアルが必要だ」とポジティブに思考する。この比率は4対6でカルチャー派が多く、「ここ最近になって非常に増えている。コロナ禍を通じて、業界の課題が一層顕在化したことに対する危機意識の表れだ」と言う。
同社はデジタル事業開発に関して、「〝OEMの武器になる〟との発想ではなく、デジタル単体で切り離して突き詰める」方針だ。他の商社ではデジタル施策をOEMと組み合わせた仕組みにするケースが多いが、「それでは『OEMと合わせて収益が取れていればいい』という発想に陥ってしまう。デジタル事業単独で収益性を高めることを優先する」(谷本部長)考えだ。新規ユーザーからは「工場(OEM)ひも付きではないのがすばらしい」と評価されており、新規の取引先を広げることにもつながっている。
〝デジタルツイン〟目指す
商社のOEM事業では、大量生産に対応するビジネスが大事であることに変わりはない。しかし「大量生産を必要とするアパレル企業が日本にどれだけあるのかを直視しなければならない」。現在、アパレル業界では無理な生産計画によって供給過多に陥り、廃止となるファッションブランドが相次いでいる。
「アパレル各社の事業体として身の丈にあった物作りが不可欠。以前にも増して適時適量で商品を市場に供給しなければならない状況だ。これにはデジタルを活用することが解決に向けた近道であることは間違いない。そうでなければアパレル業界は生き残れない」と断言する。
アパレル・ファッション業界において、実在する物や仕組みをデジタル空間でリアルに表現する〝デジタルツイン〟を目指す三菱商事ファッション。「ファッション業界に対して、商社の立ち位置で出来ることは結構ある。業界の課題解決のお手伝いをしていきたい」と言い切る。
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