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2020.10.14

MEDIA

《連載 デジタル化が加速する商社OEM・ODM①》三菱商事ファッション㊤ デジタルスキームが進化

繊研新聞 2020年10月14日付

谷本デジタル事業開発部長

 商社のOEM・ODM(相手先ブランドによる設計・生産)でデジタル技術の導入が相次ぎ、〝DX(デジタルトランスフォーメーション)元年〟の様相を呈している。アパレル業界が抱える供給過多、大量在庫などの課題解決に向けて、商社はデジタル技術を活用した構造改革に挑む。業界のニューノーマルを担う各商社のキーマンに課題と展望を聞いた。(北川民夫)

商社の立ち位置生かす

 「業界のOEMの課題解決に向けて積極的にアプローチしている」とは三菱商事ファッションの谷本広幸デジタル事業推進本部デジタル事業開発部長。同社は今年4月にデジタル事業推進本部を新設、7月にはアパレルの製販全体の変革を促す「3D・CGデジタルスキーム」をスタートした。これは、CAD(コンピューターによる設計)を起点に、試作反やサンプル縫製を不要とするスキーム。アパレルのオンラインビジネスに適応する生産手法で、ECではCG画像処理を利用した先行受注が可能になる。これにより、大量の生産や在庫、廃棄を回避するサステイナブル(持続可能)な物作りにも貢献する構えだ。

 同スキームは①2Dパターンを3Dで確認修正する「3Dモデリング技術」②生地情報を正確にスキャニングして3D画像に反映させる「生地スキャニング技術」③3Dモデリング・データに色や光源を補正してEC利用できる「CG技術」――がある。

 谷本部長は「17年に骨子を構想し、19年以降に販路別各1社に限定してニーズ確認を行い、今年7月から本格的にスタートした。クオリティーや方向性の面で他社とは明確に差別化ができている」と胸を張る。

 ユーザーの用途に合わせた開発を行い、①業界のプロ同士がフィッティングやデザイン確認を目的に企画段階で使う「3Dモデリング」②相手先ブランドの営業ツールや展示会カタログに使う「簡易版CG」③BtoC(企業対消費者取引)向けに、商品の背景や着用モデルの顔を入れ替えられる「EC用CG」――の3タイプを提案する。

 谷本部長は「商社は、アパレルの平均的な原価率30%の範囲の中で品質と納期を守りながら物作りを担ってきた。しかし、この部分の合理化は既にほぼ限界にある。一方、原価率以外の〝70%の部分〟では、在庫過多やささげ(撮影、採寸、原稿作成)業務などの面で無駄がかなりある。これらを含む全体の課題解決を商社の立ち位置を生かして行う」と言い切る。

感性と技術力が向上

 ファッション向けの3D・CGにはファッション感度の高さが要求される。3Dモデリングではフィッティングの仕方、生地スキャニング技術では生地データでの反射性や透過性のバランスをとる感覚、CGについてはライティングや陰影のつけ方、いずれもデジタル技術とともに高い感性が必要となる。

 三菱商事ファッションでは、各工程にエキスパートの人材を配置して内製化している。「社内で議論を週単位で行い、常にブラッシュアップしている。特にここ数カ月間の人的な能力向上は目覚ましいものがある」と言う。7月のスキームのスタート以降、スポーツアパレルやファッションアパレル、シャツ専業メーカーなど約20社からの引き合いがあり、各社のニーズに対応することで感性と技術力が向上している。谷本部長は「一気に市場を広げるよりも、取り組み先との関係を深めながら知見を高めたい」としている。

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