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2022.07.20

MEDIA

《連載 多様化と共創と 商社が仕掛けるデジタルSCM①》三菱商事ファッション・デジタル事業推進本部デジタル事業開発部長 谷本広幸氏 OEM・ODMの高度化目指す

繊研新聞 2022 年 7月 19日付

谷本広幸氏

商社が推進するアパレルDX(デジタルトランスフォーメーション)が多様化している。各社各様に自社が得意とする事業領域を中核としながら、業界の改革を目指す新たなデジタルサプライチェーンの構築を目指している。

業務負担を軽減・効率化

 当社は、アパレルの商流をデジタルサプライチェーンマネジメントによって変革する。当社のデジタル事業の目的はODM・OEM(相手先ブランドによる設計・生産)の高度化だ。業務負担の軽減や商流の効率化、過剰在庫の軽減といった業務改善に向けてデジタル化を推進することが重要であり、自社のOEM事業と一体となってデジタル事業を推進することで収益性を発揮する。

 現在、一般的に業界で行われているアパレル業務は企画、生産、物流、販売など各部門単位で作業が行われる状況にある。あたかも〝バケツリレー〟の様に各セクションごとにしか〝バケツの中身〟、つまり〝業務の進行状況〟が見えない構造となっている。当社が目指す業務フローは、デジタルプラットフォーム上で、商品開発段階のデジタルプロトタイプを可視化するものだ。これにより各セクションがコンカレント(同時並行)に仕事ができる。例えば、販売部門の担当者が、商品企画の開発データが作成された段階で、販売促進に向けたプロモーションや、店舗のVMD構成などの業務を早期に着手、調整することができる。また、生産における品質管理の担当者が、品質リスクでチェックするべき点を商品開発者に指摘することが可能になる。

 一方、アパレル業界においては大手総合アパレルを中心に、3Dモデリングの内製化が進んでいる。しかしながら、3Dモデリングの点の部分だけでは、人材配置やソフト費用などのコストに対しての費用対効果や業務効率を図ることは難しい。企画・生産・販売まで一貫のデジタルサプライチェーンを構築することが重要だ。

一貫のフローを確立

 当社は、生地をデジタルデータ化して公開している「e-Fabric」(イー・ファブリック)と3D・CGデジタルスキームを活用することで、企画から生産までの一貫したフローの「e-Apparel」(イー・アパレル)をローンチした。これによりOEM・ODM領域において、企画・デザインとデジタルファブリック、3D・CG、OEM取引などを包括するシステムの完成形にたどり着いた。これを活用し、高度化したODMを市場に提供する。

 また、今年はイー・ファブリックを通じて、国内外のテキスタイルメーカーやコンバーターとの連携を進める。イーファブリックは、素材の反射性や凹凸感、カラーなどのテクスチャーデータ及び物性データをファイル形式で、取引先が無料ダウンロードできる。リアルサンプル作成のための素材確認やデジタル3D・CGサンプルにも活用できるデジタル生地データを公開しており、販売先が入手できるものだ。この利便性を発揮して更に広げていきたい。

 リアルとバーチャルの双方に向けたデータ供給事業の推進にも確信を得ている。当社のデジタル技術は、ゲーム業界やAR(拡張現実)、メタバースなどバーチャル市場に向けて親和性を発揮している。当社は、この新たな事業領域に進出する大胆なトランスフォーメーションに向かう〝入り口〟に立てたと考える。当社の開発技術は、単純な3Dモデリングだけでなく、CGソフトやムービーソフト、ゲームエンジン、ビューワーなど多岐にわたっており、これらはエンターテイメント市場が求めるものでもある。そこに当社が進出していることに対して、バーチャル領域の企業から良い意味での驚きをもって受け入れられている。この分野での市場拡大も図っていきたい。

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